essay & activity【2】
2.創造の場
〈新世紀バウハウス〉構想[建築・芸術学校(大学院)とマイスタースクールの設立]の理念は、21世紀の未来100年を見据えた芸術復興と産業復興を目指すことにある。
「美の世紀」を四国から発信する。四国が、日本の芸術や伝統工芸・地場産業に支えられた技能だけではなく、世界の芸術や技能もその地に置いて育てる。
瀬戸の地の世界でも類い希な自然的資産は、その為にあるように思われる。何故なら、ランドスケープデザインは人間と自然の共通の資質を、
あるいは命題を造型するひとつの芸術であり、地域が持続可能である様な生産のデザインをも含めて自足たりうる指針も提供するからだ。
自足とはコミュニティーの食料を充足する意味もある。
この構想を、複数の県・市町村が広域文化圏構想をより長期的なビジョンとして捉えるならば、21世紀に引き継がれるべき価値あるものを問う試金石に
なるとともに、ストックの時代にあって各々の地域特性を積極的に出しながら、共存していくシステムを作り出す良いモデルになるだろう。
建築・芸術学校(大学院)は、その施設とライブラリー・カリキュラムをして専門的な学術研究と発表の場であり、マイスタースクールは各市町村が
その地域特性を生かして、国内・国外のマイスター(名人・親方)を置き、マイスターの全人格の信頼をもとに、技能を習得する場である。
工房や学校の施設・運営は各市町村の個性に委ねられる。大工・木工・石工・左官・漆芸・瓦・鍛冶屋・紙・ガラス・染色・織物・印刷・出版・写真・陶芸・
映像・等おおよそ芸術に関する表現と技能を学ぶ場は、材料の自足もでき、地場産業発展の契機になる。大学院は建築学部と芸術学部の2部制からなる。
〈新世紀バウハウス〉構想のコンセプトはフローチャートを参照。
このプロジェクトは、四国だけではなく、世界の三つの地域が互いに連動するという新しい提案が付加された。地球上の建築の生態系への回帰と、人間と自然の共生をテーマに、コミュニティーの再生を研究するにあたって各地区がスキーム毎にプログラムする。国家的な背景の違いはあるが、都市(ニューヨーク、パリ)と自然(四国)のパラダイムをコミュニティーの場として具体的に提案する試みもみられる。開校は21世紀初頭。場所は四国のへそ。
3.風景のアバンギャルド
1995年11月初旬、厳冬の到来を告げる重厚な雲塊をぬけると、眼下にスカイスクレパーズで造型されたマンハッタン島があった。
グレーのベールで覆われた無数の切り立った摩天楼の尖塔が、弱い陽光を反射させてキラキラ光る。喧噪が凍って静寂が張りついている。
浅い眠りから覚めやらぬイメージがたゆたう中で、都市が現実の生々しい体験を即座に凝固させ、その成り立ちを静かに見せて、横たえている印象をおぼえた。
また、ニューヨークはアールデコの切り立った幾何学の印象からか、いつも、無数の水晶の結晶を連想させる。久方ぶりである。
私達にはソーホー地区のレストラン設計の他にもう一つここに来た理由があった。
「新世紀バウハウス構想」についてコロンビア大学のプロフェッサーアーキテクト・スタン・アレンと会う事だった。このプロジェクトのコーディネーターを
要請することと、この構想について具体的な場所の設定、全体のコンセプトプログラムを検討するのが目的であった。
この構想は、彼らも長年切望していたものだという。地球上で3カ所を設定し、それぞれの地域のスキームによって異なった研究事項をプログラムする
新しい提案がなされた。
四国の場合は瀬戸内海、讃岐平野、四国山脈という地勢を断面的フレーズに置き換え、そのグラデーションに沿って計画したい。
その対局にある荒涼たる大地、アリゾナに2つの例がある。
一つはアーコサンティーという。70年代のはじめイタリアの建築家パオロ・ソレリとその思想に共鳴する仲間達の手による実験都市を建設する試みである。
彼自身が描くエコロジカルな実験都市の実現である。
もう一つはフランク・ロイド・ライトによるタリアセン・ウェストである。いずれも厳しい環境と対峙をし、建築の理論を実践しているプロジェクトである。
一般に都市や集落(ニューヨークや四国の集落も)は、トポロジカルな空間構成の集合として分析される。しかしアリゾナに於いては、むしろ人間の詩的な
実存的空間として立ち上がり、建築的空間が事物の集合の普遍的な力(M・メルロー・ポンティー)を強く感じさせる。
二人の建築家がその直感的な知覚をとおして、生への羨望をいかに空間としてイメージしたかが如実にうかがえる。
帰国して1年後、我々は香川県のある町に新世紀バウハウス構想を提案することになる。
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マイスタースクール構想は、実際的な芸術活動を通して、特化された文化圏構想を実現することに目的を置いています。
このessayは、その構想の実現に向けて、私たちが実際にアクションを起こしているドキュメント(実話)です。2003年。塩江町で燻煙熱処理の技術を軸に、地域の産業復興と芸術運動がリンクして、本来あるべき中山間地域の文化
の再建を目指したプロジェクトが進んでいます。
[Bauhaus 21構想」がここから始まります。
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